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山田太一の扉

作家山田太一さんの作品群は、私たちに開かれた扉ではないでしょうか。

わしも介護をやってみた!(22) クリアーな人が放っておかれる優先順位。

 

十月十二日 (火)。

あるお婆さんが言う。

「私は考えているんです。ここに来ることを。だって、つまんないんです。ただ座っているだけだし。これじゃ家にいて孫と遊んでいるほうがよっぽどましです」

 

これは耳が痛い発言である。

どうしてもフロアの中でポツンとひとりで放っておかれる人は発生する。そういう状態にならないように職員は懸命にやっているのだが、残念ながら限界がある。そのような時は雑誌や本を渡したりテレビを見ることを勧めたりする。でも細かい字が読めない方もいるし、耳が遠い方もいるのでなかなかうまくいかない。

 

フロアの優先順位はまず危険の回避である。

妄想があり立ち上がりが頻繁な方、行動に粗暴性があり他の利用者さんに迷惑をかける方、お茶などを差し上げた時誤嚥むせこみがあり、つきっきりでないといけない方。そういう方々が優先順位のトップになる。

このような方が三人くらいいると、もう職員の対応はアップアップとなる。結果として「さして手がかからない方」は放っておかれることになり、手がかからない方というのは殆どの場合、痴呆のない思考のクリアーな方なので、より一層退屈感を感じることになる。

 

言ってみれば昔の中学や高校で非行に走る子どもに対しては熱心な対応を学校がしたのに、手のかからない「普通の子」は放っておかれたのと一緒で、問題を抱えている人の方が優先するのである。しかし抱えている問題が大きかろうと小さかろうとサービスは平等に提供しなくてはならないと思う。

 

お婆さんは更に言う。

「でもね、変なことを聞いたんです。私がここに来るのは私のためじゃないんですって。私の家族のためなんですって。私がここに来ると家族がホッとするんですって。私って邪魔者なんですかねえ」

これは更に耳の痛い言葉である。返答に困った。

 

 




 

23) 三十三歳。イケメン新人五十嵐氏の介護とは? に続く。
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