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山田太一の扉

作家山田太一さんの作品群は、私たちに開かれた扉ではないでしょうか。

わしも介護をやってみた!(24) 五十嵐氏との関係。

 

十一月十二日(金)。

私は運動をかねて出来うる限り自転車通勤をしようと思っている。約二十五分から三十分の行程である。殆どの人が車で来ているので「そんなに遠い所からあ」などと驚嘆されたりする。

しかし今日は午前中雨が降っていたこともあり車で行った。

それがある運命の引き金を引く結果になったかも知れないと、今思っている。

 

 

 

一日の仕事が終り歩いて五分ほどの駐車場に向かう途中のことである。伊豆さんというキャリア五年の古株パートさんと一緒に歩くことになった。あの宮口精二の如き剣の達人よりも古く、馬飼野さんに続く女性最古参である。いつもはセンターの駐輪場前でさようならなので、駐車場まで一緒に歩くなどということは大変珍しいことである。

 

 

伊豆さんは歩きながら「馬飼野さんあなたのこと誉めてますよ」と言い私の仕事ぶりを誉めてくれた。数ヶ月まえの「政変」の時に惜しまれながら辞めた有能な非常勤男性がいたそうなのだが、彼の穴を私が埋めていると馬飼野さんは絶賛しているそうである。

その人は腹話術や手品も出来る器用な人で、利用者さんを楽しませる才能に溢れた方だったそうである。その人の穴を埋めたなどと言われると恐れ多いのだが、それに比して五十嵐氏はという話になり、駐車場についても話は終らず立ち話となった。

 

あの流れを読めない仕事振りと独断振りがとても迷惑ということでは話は一致。大きな交差点の角にある駐車場で車の音に負けないくらいの声で話し、勿論黒岩氏のことも槍玉にあがった。

話に夢中になり駐車場から出ようする車の邪魔をしていることに気付き、慌てて脇までどいて、足が疲れてきたこともあり「私の車に乗って話しましょう」と伊豆さんに言われ更に車の中で話し、なんと二時間も喋ってしまった。

なんとかこの職場をよくしたい、お互いに頑張りましょうということで別れた。

 

久し振りにお喋りし過ぎた興奮と、ベテランに評価されている自分という高揚感の中で私は帰路についたのであるが、嫌なことに気付いた。

 

暗くて分かりにくかったが、あの話の途中で出て行った車は五十嵐氏の車だった。

ということはあるところまでは私たちの話は聞かれた可能性がある。

車の音が激しかったが信号の状態によっては静かになる時もある。もし車の窓を開けていてエンジンをかけてなかったら聞こえた筈である。

 

自分の陰口を叩かれているのを偶然聞くという、血が逆流するような瞬間を彼は体験したのかも知れない。そういえば彼の車は私たちが邪魔だったこともありなかなかスタートしなかった。それは聞き耳をたててしまい出るに出られなくなったせいではなかったか。

 

 

忠告をするなら細心の注意をしなくてはならないと思っていたのに、これは失敗だったと後悔している。

さて来週からどうなるか。

もし聞かれたことが分かるような態度で出てきたら、もう憎まれ役を買うしかないだろう。腹を決めねばならない。

 

 

 




「わしも介護をやってみた!」(25) 管理者は五十嵐氏をどう見ているか。
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