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山田太一の扉

作家山田太一さんの作品群は、私たちに開かれた扉ではないでしょうか。

山田ファンの始まり(13)薫陶の限界

 

「山田ファンの始まり(13薫陶の限界

 

 

 

支払いになった時、男は飲み代を払いませんでした。

 

私たちは男にビールを奢る約束をしていたからです。

少し前に山田さんの講演があり、その要約文を男が書いてネットにアップしてくれていて、そのことへの感謝でした。今度のオフ会では一杯奢るよと約束していたのです。

 

ところが、山田ファンじゃないと誹謗された女性が、その約束をよく了解していなかったのです。女性は、お金も払わないで帰るのか、なんて人だと激怒したのです。

不幸なすれ違いでした。

そいう波乱に継ぐ波乱でオフ会は終わりました。

 

 

翌日女性は掲示板を読み直してそのことに気付き、掲示板に「よく読んでなくて、すみません」と謝ってこられました。

 

私は「まあ喧嘩はあったけど、とにかく怪我人が出なくて良かった」なんて書き込みました。

日頃どんな飲み会やってんだと思われそうなことを言って笑い話にしようとしたのですが、事態は更に急変します。

 

 

男は「ドラマ・ファン」に「お金を返却したい」と書き込んできたのです。


女性にメールを下さいと言っていました(HNをクリックするとメールを送れるようにしてありました)。

それがだめなら、女性の最寄りの駅まで行きますので手渡ししたいとか、私書箱止めでお金(5千円図書券)を入れておくから、それでどうだろうかとかとも言い、とにかく女性への連絡方法をいろいろ提案してきました。

 

私は分かりませんでした。

ご馳走したのはオフ会を主催した私です。それを一参加者に過ぎない女性に何故返そうとするのでしょう?

女性は綺麗な人で、男は気のあるそぶりを見せていましたが、そういう下心なのでしょうか。でもこの人は奥さんです。昔の言葉で恐縮ですが「女ひでり」の男は恥ずかしいことをするもんだと思いました。


当然、そんな要求に応じられるわけもなく、私は「ご馳走したのですから返却には及びません」と「ドラマ・ファン」に書き込みました。

男の書き込みはそれ以後なくなり、一件落着したようでした。

 

 

それからも山田さんの講演会が散発的にあり、「ドラマ・ファン」のみんなと参加していました。男はいつも最前列にいましたが、話をすることはありませんでした。講演会が終わるとすぐに帰っていたようでした。

 

ある時山田さんのトークショーが終わったあと、山田さんとどっかでお茶を飲みましょうかなんて話をしていました。

男は、たまたまフロアの端にいた○○○さんに、近づきました。そして手に持っていた封筒を強引に押し付けました。○○○さんは驚きましたが、手に封筒を持たされました。

男は逃げるように去り、封筒の中を見ると、5千円入っていました。

 

慌てた○○○さんは、私と山田さんのところへ駆け寄り、「どうしましょう?」と相談にきました。途方に暮れた表情でした。しかし返そうにも本人はもう逃げ去っていました。

 

 

それが5千円授受の真相です。

おごられる覚えはないというなら、正々堂々と私に返せばいいのに、こそこそと主催者ではない人に押し付けて行ったのです。

 

それを脅されて支払ったと被害者顔して書く。これが山田ファンかと思いました。

山田作品に出会うというのは、人間のもっともコアな部分を揺さぶられる体験と言え、その人を浄化せずにはおかないと私などは思っていますが、そうでない人もいて、犯罪者もいるということなのです。

山田作品からの薫陶というのも限界があるのだと思わざるを得ません。

 





それから更に奇妙な思い出があります。今でも謎の思い出です。

男は脚本家志望らしく、私に原稿を読んで欲しいと言ってきたことがありました。意外でした。池袋の駅前でしたが「何故私に?」と聞きました。

少し私が脚本を書いたことがあり、そのことを知っているからとのことでした。

だけど私の作品を見たこともないだろう、面白いものを書いたかわからないだろうと言いました。すると山田さんとのお付き合いも知っているしと・・ごにょごにょ言って奇妙な笑みを浮かべました。まるでチェシャ猫のようでした。

 

 

まあ、少しでもキャリアのある人に見てもらいたいというのは分かります。しかし決定的に奇妙なことがありました。

 

ほんの何分か前に、私たちは山田さんと池袋の喫茶店でお茶を飲んでいたのです。山田ファンと映画関係者と数人でした。

ですから、そんな原稿を持っていたなら、何故山田さんに出さなかったんだと思いました。

もちろん山田さんが受け取らない可能性はあったけど、それでも、私か山田さんかと言えば誰が考えても山田さんでしょう。山田さんを否定してまで私に原稿を出す必然性を感じませんでした。

 

男はあれだけブログで山田太一を語っているのに、喫茶店では一言も喋りませんでした。2時間近い間でしたが、無言でした。あこがれの山田太一の前であがっていたのでしょう。

 

むかし、男のブログに行った時、「山田記事」だけ読みました。その見当違いの思い込みと、自己中心的な文章に呆れました。読書家のようですが、狂った羅針盤でいくら読んでも無駄だと思いました。

この男は自分だけが賢いと思い過ぎている。
母親が自殺したという一件も、その不幸に滑稽なほどスポイルされている。
インテリぶって、まるでチンパンジーがスーツを着ているような陳腐さです。
「ウジ虫ブログ」という評判に納得しました。

 

それでも、哀れな情熱だけど、山田太一に恋い焦がれているのは本当のようでした。
しかし、結局原稿を出せなかった。
それで、せっかく持って来たんだから、私に渡そうとしたのではないかと思えました。



男は「感想は結構です、読んでいただくだけでいいです」と言いました。そうは言っても感想は欲しいだろうと思いながら、原稿を受け取りました。

 

 

 

 

 

山田ファンの始まり(14)悪しき山田ファンのヒエラルキー」に続く。

 

2021.6.11
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