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山田太一の扉

作家山田太一さんの作品群は、私たちに開かれた扉ではないでしょうか。

わしも介護をやってみた!(13)ホステスの世界。

 

七月十九日(月)

ケアセンターに勤めはじめて最初に感じたのは「これは、まるっきりホステスじゃないか」という事であった。

毎日毎日利用者さんを車でお迎えし、入浴、髭剃り、爪切り、昼食、話し相手、体操、レクリエーションなどのサービスを午後三時頃まで提供し、再び各家庭に車で送り届ける。その一連の接待の繰り返しは徹底した顧客の状況に対する気配りと、退屈させない効果的サービスである。

 

利用者さんの状態は千差万別であるが、それに対する配慮のトップは利用者の安全である。

フロアで椅子から突然立ち上がり転倒しないか、トイレまでの誘導は勿論、危険なく円滑に排尿排便が出来るか、尚且つパンツ紙おむつをちゃんと着用出来るか、食事の時に誤嚥しないか、むせこみはしないか等々、やることはたくさんあり、しかもひとり一人勘所が違っていて、その気配りの範囲は留まることを知らない。

 

しかし職員の態度は終始一貫にこやかで優しくフロアの雰囲気は限りなく楽しい会話と冗談の連続である。
ところが楽しい雰囲気の中で突然危険が発生するや、まるで大統領警護のシークレットサービスのように職員は利用者のもとへ駆けつける。
もし自分の近くで危険が発生していたのに遠くの職員が先に駆けつけたりすると、すみません気がつきませんでという心情になり至らなさを痛感する。

 

もうまるで酔客が煙草を出したら素早くライターを出すホステスの世界で、その早さを競っているような部分も無きにしも非ずである。

まして利用者さんへの接待はトークが中心であり、ホステスと同じく話題がどれ位豊富か、また利用者の心を如何に掴んでいるかということが問われてくる。

 

すると、これはまったくもって相手が酔客と老人の違いだけであって、仕事の内実は限りなくホステスに近いのではないか。私の場合は男なのでホストということになるのだろうが、この職場はホステスとホストがいり乱れて何処まで深い気くばりが出来るかということを競っている感じがする。

 

だから女性をはじめとする職員のにこやかな笑顔が怖い。

その笑顔の下のピリピリを感じ、突然女性職員に注意をされたりすると、綺麗な職員さんだなあなんて甘い気持ちが一遍に吹き飛んでしまう。

 

 









14)血尿 に続く。

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