わしも介護をやってみた!(20) チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ。
九月十七日(金)。
昼食後は何がしかのプログラムがある。ゲームであったり、おやつ作りであったり、ドライブであったり、利用者さんを退屈させないことはもちろん、なるべく体を動かせるようなレクリエーションを心がける。
それが終り三時のおやつを出し帰りの支度が整ってから車に乗るまでの間、ひとときの退屈な時間が生じる。かといって何かゲームをやるような時間もない。
個別に少し会話をするくらいのことしか出来ないのだが、あるベテラン非常勤女性はこういう時必ず歌を歌い始める。歌詞を印刷したコピー本があるのだがそれを配り、昔懐かしい歌を手拍子で歌う。
ほんのひとときであるが、帰りしなにそういうことがあると本当に気分よくセンターをあとに出来るのである。終りよければ全てよしではないが、「仕上げ」というものは大事である。ベテランはよく知っている。
この日もそんな感じで歌が始まった時、私はフロアの横の部屋でベッドに眠っているお爺さん(血尿を出した方)をおこしてトイレ誘導をしようとしていた。お爺さんは少し眠ったので元気を回復されたらしく、歩いて行けそうだった。
赤ちゃんの「あんよは上手」の要領で両手を前でとり、少しずつ歩いてもらって部屋からフロアに出ると丁度歌が「東京音頭」になっていた。
踊りお~どるな~あ~ら~、ちょいと、とうきょう、お~ん~ど~お~♪というやつである。そしてチャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ、というあのリズム。
そのリズムと手拍子が丁度お爺さんの誘導のリズムと重なってしまった。
私が面白がって誘導する手をより一層リズムにのせると、それに合わせてお爺さんは足を出した。歩きやすそうだった。一歩一歩と私の手の誘導がまるで盆踊りのような按配になり、フロアの半ばまで来たところでみんな一斉に気付いた。
ドッと笑った。
お爺さんもその笑いで自分たちが衆人環視の下で踊るように歩いていることに気付き「何させるんだよう」という苦笑いをした。それを見てまたみんなが笑った。
チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ。
私たちはみんなの手拍子でトイレに入って行った。ドアを閉めると、トイレのドア越しにまたドッと笑い声が聞こえた。
送迎車の準備が出来たらしく、そのあとすぐに利用者さんの呼び出しが始まり皆で歌いながらエレベーターに向かい始めた。
トイレから出たおじいさんも、チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカと向かった。
また笑い声。
思いがけずいい「ショー」をやったと私は思った。「ショー」ではお爺さんに申し訳ないけど。