忍者ブログ

山田太一の扉

作家山田太一さんの作品群は、私たちに開かれた扉ではないでしょうか。

わしも介護をやってみた!(30) コーラスライン。

 

十二月六日(月)。

再び月曜日が来て、月曜非常勤メンバーは定時間後にかくし芸の打ち合わせに入った。

人数は八人。男性二人、女性六人。

八人の踊る戦士である。

 

まず私のビデオを見ながらザッと皆で踊ってみた。

凄い。私は呆れた。伊豆さんはサンバステップこそ踏めないものの、フリは大体マスターしていた。そしてナースの榊原さんもかなり覚えていた。

他は私と同じくバラバラでついて行けない。ある女性が早くも「みんな、すご~い。そんなに覚えているのね。私だめだあ」と弱音を吐きリタイヤすると言い始めた。

 

完璧を求めているわけではない。
楽しくやれればという主旨なのだからと私や伊豆さんが女性を慰める。しかし伊豆さんの完璧ぶりにすっかり自信をなくしてしまったようだ。それほど伊豆さんは凄いのである。

女性は椅子に座ってしまい傍観の体制に入ってしまった。この人は運転をやるという予定で入ったが、余りに狭い道を走るので恐れをなして時給が下がってもいいから添乗だけの役にしてもらった人である。割と早めに自分に対して見切りをつける人なのかも知れない。

その女性とほぼ同期の女性が「私も全然出来ないよウ、でも後ろのほうで踊ろうよ」と誘う。同じく同期の別の女性が「年寄りグループは後ろで踊ればいいじゃん。前の人のフリをまねして」と言う。

「年寄り?じゃあ何?自分は若いグループだって言うの?」

「あら、だって」

「ひどーい。そんな違わないでしょう」と軽口を叩き合う。

 

やがて気を取り直して女性は踊り始めた。

確かにマツケンサンバによって新人たちの間にある結束が生じて来ていることを感じる。伊豆さんが願ったような世界が出来つつある。

 

フロアのテレビに向かってみんなで踊る。

テレビの背後にはサッシの大きな窓が広がり、そこに皆の姿が映る。夜なので、まるで鏡に向かっているような按配である。それぞれが自分のフリを確認しつつ踊る。

まるでミュージカル「コーラスライン」だ。

 

 




 

31) 月曜以外にマツケンをやるのか? に続く。

PR