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山田太一の扉

作家山田太一さんの作品群は、私たちに開かれた扉ではないでしょうか。

「日本の面影」(前編)

 

 

「日本の面影」舞台版(前編)。

 

 

「日本の面影」は1984年にNHK4回にわたって放送されたドラマです。

 

小泉八雲(ラフカディオハーン)の一生を描きました。

明治の近代化。西欧化。

その光と影。

当時、そして今でも、日本がどんどん失くしつつあるものへの哀惜。

理屈もあるけど、決して理屈っぽくならず、血肉化された庶民のエピソードの中に描かれていて見事です。

 

 

 

そして舞台化もされました。

連続ドラマ4回分を2時間ほどの舞台に圧縮されましたが、見事な劇化でした。その手腕に唸りました。

再演を重ね、200110月イギリス公演が企画されました。

 

(参考資料。)http://www7b.biglobe.ne.jp/~e-h/chijinkai/plays/81X.htm

 

スタッフ、キャストと共に、限られた人数ですが日本の観客も行くという珍しいツアーでした。

風間杜夫ファンなどに交じって、山田太一ファンとしてただ一人若き女性が参加されました。その方のレポートが「ドラマ・ファン」に4回に分けて連載されました。

 

当時山田さんは「連続ドラマはもう書かない」と宣言され、山田ファンにショックを与えていたころです。そんな会話も出て来ます。イギリス公演がどのような雰囲気で行われたのか、貴重な記録です。お楽しみ下さい。

 

 

 

 

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ロンドン公演 その1

 

8日に、帰国しました。

 

レポートというほどのものではありませんが、見て来たことを、お伝えします。

 

ロンドンのリッチモンドシアターという、伝統のある劇場での公演でした。

席は3階までありました。

私は、3日間の内、1・2日目の公演を見ました。(ツアーに組み込まれていたのは1日目だけでした。)

みなさん、どのくらいの観客がいたと思いますか?もう、どこかから、情報聞いてますか?・・観客は、3階席までいっぱいでした。

 

 

 

 

 

私は、1日目は、ツアーでチケットも込みだったので、1階の前から15列目の真ん中でした。

 

(太一さんは14列目の右端で、奥様、息子さん、そのお嫁さんと4人で並んで観ていらっしゃいました)

 

 

 

1日目は送り迎えのバスがありましたが2日目は、ひとりで地下鉄に乗って行き、当日券を買いました。

3階の後ろから、3列目でした。

 

 

ツアー以外の日本人のお客さんもたくさんいましたが、イギリス人の方が、たくさんいたのは意外でした。

 

お芝居の最中は、とても良い雰囲気で、笑い声がたびたび聞こえてきました。

 

役者さんたちからも、やりやすかった、との感想がありました。

 

・・つづく。

 

 

 

 

 

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ロンドン公演 その2

 

ひねった文章が書けなくて、すみません・・。

 

 

 

公演の後、レセプションがあり、リッチモンドシアターのオーナー(?)の方の挨拶がありました。

 

「素晴らしかった」と。

 

日本の会社を招いたのは、初めてだそうです。

 

 

 

次の日、地人会の演出の木村さんがおっしゃっていたのは、次のようなことでした。・・・

 

「どうして、こんなに素晴らしいのに、3日間しかやらないのか?」と聞かれた。

自分はこんなにお客さんが入るとは思っていなかった。

「そんなに入らないよ」

「ロンドンの人は、1年に1度行くか行かないか、というのが劇場だ」

と調査の段階で忠告をする人がいて、

びびって、

日程を短くした。

 

 

イギリスの人に「今まで、触れたことのないものに触れた」という感想を言われた、それは、山田太一さんの『ラヴ』という作品に自分が出逢った時に感じたのと、同じような感覚ではないか。・・・というようなことでした。

 

 

 

 

 

風間杜夫さんは・・・自分はハーンとは違い、幽霊は信じない方で、山田さんに「そういうこともある、と考えた方がいい」といわれているくらいだが、歴史のある劇場で、今まで数多くの人たちがこの舞台に立ったのだと思うと不思議な感覚で、磁場のようなものを感じながら演じている、安心して身を委ねられる。・・・・と言ってました。  

 

言葉が、全て覚えているわけではないので、正確ではないのですが、だいたいこんな感じでした。

 

他の役者さんたちの言葉も、次回覚えている限り、書きます。

 

 

 

 

 

つづく。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「日本の面影」(後編)に続く。

 

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「日本の面影」(後編)

 

 

 

「日本の面影」舞台版(後編)

 

 

 

ロンドン公演 その3

 

 

 

 

役者さんのコメントの続きから でしたよね・・。

 

パソコンに向かう時間がとれなくて、記憶が遠のいていってます。

 

 

 

 

 三田和代さん(妻・小泉セツ)・・客席の雰囲気がとてもよくて、自分達が、サービスしてもらっているみたいだった。

 

このまま、お客さんごと、日本に連れて帰りたい。

 

自分をあまり作らずに、自然に演技できた。

 

 

 

 

加藤土代子さん(セツの養母・稲垣トミ)・・今回のパンフレットを、ずっと大事にとっ

ておいて、いつか、孫に、「おばあちゃんは、ロンドンの舞台に立った」と、見せるつも

り。

 

 

 

内山森彦さん(セツの養父・稲垣金十郎)・・緊張しました。

 

 

加藤佳男さん(佐伯先生と、ハーンの父)・・奥さんもツアーに参加しているので、(今、自己紹介する時)自分をうまくコントロールできません。

 

 

 

 

山本亘さん(西田先生)、松下砂稚子さん(セツの実母)、松熊信義さん(セツの養祖父)、のコメントが、今、思い出せません。

 

 

 

 

あと、若い3人(中村啓士さん、大原和洋さん、藤島琴美さん)は、ティーパーティーには、参加されていませんでした。

 

 

 

 

みなさん、もっといろいろ話して下さったのに、残念なことに一部分ずつしか、思い出せません。

記憶から抜け落ちています。

 

 

 

 

 

 

ここから先は、ティーパーティーで、山田太一さんのお隣りに座ってからのことです。

 

 

私は、質問らしい質問はほとんどしませんでした。

 

隣にいるだけで、満足してしまって、

自分の思っていることを少し話しただけでした。

 

 

今、考えると失礼なことを言ったかもしれません。

 

 

太一さんなら、わかってくれる、と安心して、あまり言葉も選ばずに話しました。

 

 

 

 

 

今までの作品は、映像では見ていないものが多く、ほとんど脚本だけだったこと。

 

インターネットを通して、太一さんのドラマをビデオに保存している方から、幸運にも連絡を頂き、これからもみることのないはずだったドラマを、見ることができたこと。

 

 

 

脚本と、実際に映像になったものとでは、印象も違い、長いこと好きだった作品の順位が変わったこと。

特に「早春スケッチブック」の山崎努さんの迫力がすごかった、こと。

 

 

 

 

 

送って頂いたビデオを、通していっぺんにみたいけれど、

 

そうする時間がなく、

 

逆に全部見てしまうのももったいなくて、

 

少しずつ大事に見ている、

 

これから作るものは数も限られてくるけれど(失礼・・!!)、

 

私は今までの作品でまだ見ていないものがあるので、

楽しみがあって良かった、

 

見ることが出来る可能性が全くないのは困るけれど、

 

ビデオも手元にあって、全部見終わっていなくて、良かった、と思っていること。---

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなことを話しました。

 

太一さんは、

 

「そうやって、保存してくれているのは、嬉しいですね」

 

「『早春スケッチブック』は山崎さんの演技が良かった、先日山崎さんと食事に行った時に、山崎さんが『早春スケッチブックを最初から見ているけれど、あれ、面白いわ』と人ごとのように言ってました」

 

とおっしゃっていました。

 

 

 

 

 

 

 

次からは、他の方からの質問です。

 

 

 

最近良かった映画は?・・「千と千尋」「愛のエチュード」「ポルノグラフィックな関係」・・今度放送される自分のドラマが、映画の内容と似ているけれど、映画を見る前に書いた物なので、パクッた訳ではありません、同じようなことを同じような時期に考えている人がいるのだ、と不思議に感じました。

「丘の上の向日葵」を書いた時にも、同じようなことがあって、その時にも、不思議に思いました。

 

 

 

 

 

 

「ふぞろいの林檎たち」は、もうやらないのですか?

 

・・僕はもうやりたくないのですが、毎年ある時期になると、テレビ局から「やりませんか」と言われる。

 

 

 

 

本当は、連続物はもう書くつもりはない、今、連続ドラマを書こうとすると、いろいろとうるさく言われて、書きたいものがなんだったのかわからなくなってしまう、つかいたい俳優さんが地味な人ばかりだと駄目だと言われるし、事件らしい事件を盛り込まないと、また駄目だと言われて、そういうことは、若いときなら、条件を呑んでも打ち勝ってやろう、と思えたけれど、今は、連続物は書かないことに決めました。

 

 

 

 

もうすぐ死んじゃうんだから好きなことだけすることにしてます。

 

(私が、NHKとかで、2~3回位とかのは?と質問すると、「それくらいならあるかもしれない」ということでした)でも、「ふぞろいの林檎たち」に関しては、やるかどうかは決めてないけれど、やるとすれば、再来年以降です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ロンドン公演 その4

 

 

 

 

--続きです。

 

 

山田さんは、最近のドラマなんかは見ないのですか?

 

・・野沢尚さんの「反乱のボヤージュ」、見てくださいと、野沢さんからビデオを送ってもらったのを見ました。

 

面白かったですよ。

 

 

 

 

 

 

 

「再会」見ましたよ、との声に・・・地方局から、好きな俳優さんで、自由にやっていい、と言われてやってみたのですが、面白かった、向こうも面白かったと言ってくれてるので、またやろうかと話してます。

 

 

 

 

 

 

インターネットはされないのですか?・・「インターネットは、悪口ばかり書いてあるし、しかも匿名の世界だから、ものすごいこと書かれているから、見ない方がいいよ」と、言われて、見ないことにしてます。

 

 

 

 

 

 

 

質問コーナー(そんなコーナーはありませんでした、今、作りました。)は、これくらいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が「2日目の公演も行きます」というと「そんなにいいですよ」と言われましたが、行きました。

 

1日目より、すごい人数に感じました。

 

 

 

 

太一さんはその日、NHKの取材があるので、早目に劇場に行かなければならない、ということでした。

 

 

 

 

ホテルから劇場へは、地下鉄を乗り換えして、あとは徒歩で行かれるとのことでした。

てっきりタクシーを使われるのかと思っていたのですが。

 

 

 

他の役者さんたちは、どのように劇場まで行かれていたのでしょう!?ツアー参加者の、風間杜夫さんのファンの方達は、3日間劇場に通って、風間さんが出て来るまで、外で待っている、と言ってました。パワフルでした。

 

 

 

 

 

 

2日目、タクシーで一緒にどうかと誘って頂きましたが、私は行きも帰りも一人で地下鉄にしました。

 

 

 

 

 

ひとりで余韻に浸りたかったのもあるし、「好き」の種類の違いを感じたりもしたので。

 

 

 

 

 

 

ティーパーティーの帰り、太一さんが

「じゃあ、もし来て下さることになったら、劇場で会いましょう」

と言ってくださいましたが、

私は3階席で、きっと太一さんは1階席で、

探さなければ見つからないような感じだったので、諦めました。

 

探し出して声を掛けても、ご迷惑だろうと思いました。

 

でも、お芝居が終わって、帰ろうと階段を降りる時、太一さんがちょうど階段を上っていらっしゃって、擦れ違いました。

 

 

 

 

「こんばんわ」

 

「こんばんわ」

 

「じゃあ、わかりましたね(地下鉄で劇場までどのように行ったらいいか、私がティーパーティーの帰りに質問して、教えてもらったので、それに対して)」

 

「はい。私、3階でした。3階も人がいっぱいでした、・・さようなら」

 

「さようなら」

 

と、会話もできました。

 

 

 

 

 

風間さんファンは、<さあ、これから>という感じでしたが、

 

私は「さようなら」と言えたので、

 

思い残すことはなく、

 

嬉しい気持ちで地下鉄に乗り込み、

 

ホテルへ帰りました。

 

 

 

 

 

とっても憧れている人なのに、太一さんと話すとき、アガリ症の私がリラックスしているのが不思議でした。

 

 

 

 

普段は、好きな人と話すとしばらく手の震えが止まらなくて、ペンのキャップもかぶせられないくらいなのに、です。

 

 

 

 

 

 

風間さんも、好きな俳優さんだったのですが、ひとこともお話できませんでした。

ファンの方々が、あまりにも熱烈で・・。

 

 

 

でも、太一さんと思いがけずたくさんお話できて、これ以上の贅沢はありませんよね。

 

                    

 

 

劇場への地下鉄での行き方まで、太一さんに聞いてしまったなんて、

 

ほんと、

 

贅沢な時間を過ごさせていただきました。

 

 

 

 

                  了

 

 

2021.2.19