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山田太一の扉

作家山田太一さんの作品群は、私たちに開かれた扉ではないでしょうか。

風の御主前

 

「風の御主前」

 

1974NHK連続ドラマ20(銀河テレビ小説)

 

「かぜのうしゅまい」と読みます。

NHKテレビ小説「藍より青く」でデビューした真木洋子と高橋幸治主演。

沖縄を舞台に、気象観測に生涯をかけた男とその妻の物語。

 

もうこんな昔のドラマを語る人はほとんどいないのだけど、ビデオもないし再び見るチャンスも皆無に等しいんだけど、今も時々この作品を思い出します。

 

 

昔のことですので、こまかいエピソードは忘れてしまっているのですが、

何故か「ああ、あのシーンが忘れられない」とか言う思い出ではなく「ドラマの味わい」だけをおぼえているのです。

 

 

例えばそれは、どういう経緯でそう言うことになったのか分からないけど、親戚の家で深夜、急ごしらえの素うどんを御馳走になり、それが思いがけず美味しくて、大人になった今もその時の「味」だけが記憶の底に残っている、というような感じに近いと思います。

 

飾りっけなし。

質素。

素朴すぎると言ってもいいくらい淡々としたエピソードの積み重ね。

綴れ織りがもたらす薫り。

 

もちろん主人公夫婦の長年のわだかまりがあっけなく邂逅していくシーンとか、覚えてるシーンはあるのですが、基本的には「味わい」だけを思い出し、今もなつかしく反芻するのです。

 

あれからもう40年以上経っているのに。

 

 

何故かあのドラマを書かれた後に山田家にお生まれになった、ご長男はこの主人公の名前と同じなんですよね。漢字が一緒かどうかはわからず、関連があるのかどうかも存じませんが。

 

 

民族学者柳田邦男など、錚々たる人々との交流があった主人公にも関わらず、そういうちょっと「派手」な部分は一切削除してか書かれた(山田さんの方針だった)、地味で質素な物語。

 

 

もう見られないのかな?

ビデオがもし発見されたら、本当に死んでもいい。

 

 2020.9.14

 

 

 

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