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山田太一の扉

作家山田太一さんの作品群は、私たちに開かれた扉ではないでしょうか。

すばらしき仲間

 

すばらしき仲間(1979.5.20TBS放送)

 

 

深沢七郎、木下恵介、山田太一の三氏が鼎談したこの番組とても面白いものでした。

         

 

木下氏が「楢山節考」とか「笛吹川」を映画化させて貰ったお礼に、何か贈り物を深沢氏に送られたそうです。

すると返礼が深沢氏から葉書で来て

「負担になるから贈らないでくれ」

と書いてあったそうです。

         

 

せっかくいい原作を頂いて、本当に有難うございましたという感謝の気持ち一杯で贈ったのに、それはもう言いにくいことをズバリと書いてあって、びっくりしたそうです。

でも、木下氏は感心してその葉書を大事にしまったというから木下氏もまた面白い。

 

いかにも深沢老人と木下氏らしいエピソードで、笑いの渦の中で山田氏も「負担になりますよねえ」と頷かれていました。

文芸春秋20019月号の「いいにくい話」というエッセイを読んだらこのことを思い出しました。

 

 

あの番組が放送された頃、まだ山田さんは巨匠にはなっていらっしゃらなくて新進気鋭のライターでした。

木下、深沢両巨匠の間でちょっと堅くなっていらしたようにも思いました。

       

 

木下さんは山田さんを

「彼はあなた(深沢さん)の小説全部読んでます。彼も今小説書いたり、それを自分でドラマ化したりしています」と深沢さんに紹介し、山田さんには「とにかく君のドラマは最後まで見ちゃうんだよねえ」と仕事振りを誉めていらっしゃいました。

 

山田さんは深沢さんに

「深沢さんは凄くたくさん小説を読んでいらっしゃるように思えるんですけど、全然読んでいらっしゃらないのですか?」

などとビックリした思いを喋っていらした。

 

まあ深沢老人は曲者ですから、読んでいないって言ったって、何処までホントだか分かりませんが、大きな農家の囲炉裏を切った部屋で車座になっての歓談でした。

湯気だったのか煙草の煙だったのか忘れましたが、あの暖かく賑やかなモワモワした空気を今も思い出します。

 

あれは深沢老人の家だったのかな?セットとは思えなかったのだけど。

 

 

 

 

 

 

 

2020.9.10

 

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